Awing労働トラブル予防相談所
経営者・人事労務担当者向けの労働トラブル予防・解決事例集。
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労災休業中に私傷病が発生した場合の対応

【Question】

当社では、昨年10月に当社倉庫内で発生した荷崩れにより1名の従業員が腕を挟まれて骨折する労災事故が発生しております。この従業員は3ヶ月間にわたり休業し、労災保険による休業補償・療養補償を受けながら入院治療及び自宅療養を行っておりました。しかし、先日通院にて診察を受けたところ、「腕のケガについてはほぼ完治しているが、これとは別に胃に腫瘍が発見され、現状として勤務に耐えられる状況には無い」との診断があった旨連絡がありました。
当社としては、これまでは業務上傷病休業として取り扱っておりましたが、今後はどのように対応すればよいのでしょうか?

労災による事故で傷病を負った場合には、労災保険による各種の補償が受けられるとともに、会社は労災による休業期間中及び休業後30日間にわたって解雇制限を受けることとなります。一方、私傷病(業務外傷病)の場合には労働基準法は特段の定めがなく、会社の就業規則の定めるところにより私傷病による休職(病気休職)などの措置が取られることとなります。

しかし、今回のようなケースでは、「胃の腫瘍」という当初の労災以外の原因(私傷病)によって、実体としては休業が続くことになります。このため、会社側としては次の2点について検討することが求められます。

・「腕の骨折」という当初の労災による休業期間がいつまでなのか?
・「胃の腫瘍」による休業はどのように取り扱うことが必要なのか?

(1)「腕の骨折」という当初の労災による休業期間がいつまでなのか?

労災保険法では原則として「労災によって生じた傷病が治ゆするまでの間」についての休業について休業補償給付を受けられることとされています。したがって、他の症状とは関係なく当初の労災休業の原因となった「腕の骨折」が治ゆした段階で休業補償給付が終了しますので、この時点で「当初の労災による休業」は終了することとなります。

なお、労災保険で使う「治ゆ」とは必ずしももとの状態まで完治した場合を表すものではなく、症状が固定し改善の見込みがなくなった場合を指す点に注意が必要です。

(2)「胃の腫瘍」による休業はどのように取り扱うべきか?

胃の腫瘍は労災とは関係の無いいわゆる「私傷病」に該当する者となります。したがって、会社の就業規則に定めるところにより、私傷病による休職の措置をとられるのが一般的な対応となります。この場合、状況によっては労災休業と私傷病休職が重なる場合も考えられます。

私傷病休職の場合には給料が支払われていない場合においては、「健康保険法による傷病手当金」が受給できることとなりますので、私傷病休職が開始されて3日間の待機が完成したら傷病手当金が受給できることとなります。但し、傷病手当金は、報酬との支給調整が行われますので、労災保険による休業補償との重複受給はできないと考えるべきでしょう。(但し、労災休業中であっても、労災要因を除き「労務に服することが出来ない」と判断できる材料があれば、労災休業中に待機3日間を完成させることは理論上可能かと思われます。)

また、会社で定めている私傷病休職の期間が満了した場合においてなお終業できない場合には、自動退職とすることも可能です。(ただし、労災休業終了から30日が経過していることが条件となります。)

 なお、今回は「腕の骨折」と「胃の腫瘍」という双方の傷病の因果関係が生じないケースを考えましたが、例えば「労災によるケガ」の休業期間中に「うつ病」を発症して終業できなくなった場合等は、「労災のケガ」と「うつ病」の間での因果関係の有無について検討を行っておくことが望ましいでしょう。労災のケガを起因として精神疾患を発症した場合に関する基準や判例などは今のところありませんが、医師の診断などで強い因果関係が認められなければ、「私傷病」として取り扱って差し支えないと考えられます。

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