Awing労働トラブル予防相談所
経営者・人事労務担当者向けの労働トラブル予防・解決事例集。
過去の判例や事例から、経営者と従業員との間で起こる解雇・未払賃金・残業・過重労働・派遣・請負など様々な労働トラブルを未然に防ぎ、また、解決の道筋を探ります。

労働トラブルを解決するための道筋

【Question】
企業活動の中では、仮に様々な対策を講じていたとしても利害関係である労使間ではちょっとした行き違いや誤解などから労働トラブルに発展してしまうことはどうしても避けられないと感じております。このような労働トラブルが発生してしまった場合には、実際にはどのような形で解決を図ることが出来るのでしょうか?

労働トラブルが一度起こってしまうと、解決の為には労使双方に時間的・精神的・時には金銭的な側面から相当の負担が生じます。このため、労務管理の中では「労働トラブルを出来るだけ起こさないように配慮する」「早期に労働トラブルの芽を摘む」といった対応を図ることが大切です。

しかし、「賃金を支払い労務の提供を受ける側」である会社側と、「労務を提供し賃金を受ける側」である従業員は、当然一種の利害関係の立場にあります。このため、ある一つの事象が起こったときに、会社側からの見方と労働者側からの見方が異なることは生じてしまうことは避けられず、どれだけ慎重な労務対応を行っていたとしても、従業員を雇って事業活動を続けている以上「労働トラブルが起こるリスク」をゼロにすることは出来ません。

実際に労働トラブルが発生するときには、ほぼ「従業員側(労働組合を含む)からの訴え」がスタート地点となります。会社の対応に不満を持つ従業員(又は退職者、場合によっては従業員や退職者が加盟する労働組合)が、口頭や書面で訴えてくることが通例です。従って、会社側の対応としては「訴えに対してどのように対応するか検討する」ことが最初の対応となります。(この他、従業員が労働基準監督署に申告を行い、監督署が申告調査を行う場合がありますが、多くの場合はその前に会社側に対して何らかのサインが示されていますので見落とさないよう注意が必要です)

労働トラブルの本質は「労働契約」に関する紛争です。契約である以上、労働契約についても当事者間での合意があれば原則として変更や解除が有効となりますので、 話し合いによって問題となっている労働契約の取り扱いについて合意ができれば、その時点で解決となります。労働トラブルを解決する場合には、次の道筋で相手方との折衝が行われます。

第1段階:任意の話し合いによる解決

 トラブルの当事者である会社と従業員の間で話し合いの場を持ち、双方が納得して解決することができれば一番負担が少なくてすみます。ただ、現実的には「立場の違い」に加えて「感情的なもつれ」が加わりますので、当事者間のみでの話し合いで解決することは稀と言わざるを得ません(そもそも、話し合いで解決するような環境であれば、労働トラブルは起こりにくいといえるでしょう。)

したがって、話し合いを行う場合には、当事者以外の第三者を交えることが解決スピードアップにつながります。特定社労士や労務問題に詳しい弁護士といった「労務の専門家」などに依頼し、客観的な立場で議論を整理し、お互いの主張するところを組み入れながら妥協点を模索することで、円満な解決をはかることが期待できます。

また、話し合いの結果については口約束に留めず「合意書」を作成することが望ましいでしょう。特に金銭の支払が伴う場合や、従業員としての身分に変化がある場合には、後々のトラブル再発を防ぐ為に書面により合意内容を確認し、証拠を残すことが大変重要となります。ただし、この合意書面は会社側にとっても従業員側にとっても重要な「証拠」となりますので、その文面は十分に吟味した上で作成しなければらなら無いことに注意が必要です。(場合によっては、公正証書の作成も考えられるでしょう。)

なお、労働組合が訴えてきた場合には、当事者本人だけではなく組合との「団体交渉」を行わなければならない場合があります。本来であれば当事者との個別の紛争として当事者同士で解決したいところではあるのですが、組合側から団体交渉の要求があった場合にこれを理由無く拒否することは、労働組合法上の「不当労働行為」となり、さらなる労働トラブルの拡大に繋がってしまう危険があります。組合を通じて訴えがあった場合には、専門家の助力を求めながら慎重な対応を行うよう心がけることが必要です。

第2段階:「個別労働紛争解決手続」による解決

当事者同士での話し合いでは解決が進まない場合には、公的な機関に仲介に入ってもらって話し合いを行う「個別労働紛争解決手続」を利用することが出来ます。通常は労働者側から手続きが開始されることが一般的ですが、会社側から利用することもできます。

「個別労働紛争解決手続」は、裁判とは異なりあくまでも当事者間の話し合いによる合意に基づく解決を目指します。機関によって詳細は異なりますが、「あっせん員」等と呼ばれる各解決機関の委員が双方の言い分を聞き、法的な論点を整理した上で、一種の和解案である「あっせん案」を提示します。当事者の双方があっせん案を受諾した場合には裁判外の和解として解決が図られることになりますが、一方でもあっせん案を拒否した場合には、「不調(=解決できない)」として終了することになっています。

任意の話し合いとは異なり、公的な場で公的な立場の人間が仲介することにより、当事者双方が多少納得が出来ないところがあったときにも「あっせん案を尊重して」合意を得やすくなるのが個別紛争解決手続の利点です。ただし、この手続きのテーブルにつくかどうか、またあっせん案を受諾するかどうかについては当事者それぞれの判断に拠ることになりますので、一方が拒否をすればこの手続きで解決を図ることは出来ません。

個別労働紛争解決手続で利用可能な機関は以下の通りです。 

・紛争調整委員会(都道府県ごとにある労働局内に設置。専門家・学識経験者によるあっせん委員)
・労働局(セクハラなどの男女雇用機会均等法関連に関する紛争について「調停」を行っている)
・労働委員会(団体交渉のあっせん・仲裁・調停が主だが、個別的労使紛争のあっせんも実施している)
・民間ADR機関(日弁連が設置する法テラスなどが有名。各機関に所属する専門家があっせんを実施)

第3段階:労働審判制度による解決

個別的労働紛争解決制度が利用できなかった場合や、同制度を利用しても解決できなかった場合には、裁判による解決手続きに委ねられることとなります。

しかし、本格的な民事裁判となると大変な時間と労力が発生してしまい、当事者双方が「骨折り損のくたびれもうけ」になってしまいます。このため、日常の活動の中で数多く発生する労働トラブルについては、本裁判よりも簡易な手続きプロセスである「労働審判制度」を利用することができます。

労働審判制度は、裁判所の中に設置された労働審判委員会(裁判官1名と労働審判員2名で構成)により原則として3回の期日によって審理が行われ、当事者双方の言い分をまとめた「調停」を行います。労働審判委員会が提示した調停案に当事者双方が合意し、成立した場合には、調停の内容は「確定判決(裁判上の和解)」と同じ効果を持ちます。(なお、労働審判制度の詳細については裁判所ホームページhttp://www.courts.go.jp/saiban/syurui/minzi/minzi_02_03.htmlをご覧ください。)

一見すると、手続きする機関が異なるだけで、個別的紛争解決手続との違いがないように感じます。しかし、「行政が行うサポート」である個別的紛争解決手続制度に対して、労働審判はあくまでも「裁判の一種」として存在することから、出される調停案の「法的な説得力」は必然的に高くなります。また、労働審判で成立した調停の内容は「確定判決」と同じですので、一方が調停結果を遵守しない場合には強制執行の手続きを取ることができるなど、重みが高まります。

最終段階:民事裁判による解決

労働審判を経ても解決が図れない場合には、民事裁判によることになってしまいます。企業側はほとんどの場合「被告(訴えられる側)」として対応することが求められますが、現在の労働裁判の判例などを読み解くと、会社の言い分を認めてもらうためには相当頑張って主張立証しなければならないのが現状です。また、仮に会社側が勝訴したとしても、裁判となったでは多額の裁判費用と時間・労力がかかる上、相手方に対して何か請求できるわけでもありませんので、まさに「労多くして益無し」という状況に陥っています。

会社側としては相手方が裁判に訴えてきたら応じるしか選択の余地がありません。したがって、「裁判を起こされないよう」に、相手方の要求に対して第1段階・第2段階のレベルで誠実に交渉を行い、極力早い段階で解決を図りたいのが現状です。

立石智工事務所では、労働トラブルの予防や解決に関するご相談・紛争解決業務に随時対応しております。労働トラブルの予防・解決に関するご相談や労働紛争解決業務に関するご依頼はこちらまでお気軽にお問合せください。

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